ハヤカワ文庫30周年アンケート

【ベスト5(順位なし)】
●カート・ヴォネガット『タイタンの妖女』
●クリフォード・D・シマック『中継ステーション』
●サミュエル・R・ディレイニー『バベル―17』
●ジェイムス・ブリッシュ『時の凱歌』
●フィリップ・K・ディック『流れよわが涙、と警官は言った』

【『タイタンの妖女』についてのコメント】
本当は『猫のゆりかご』や『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』もベストに入れたかった。『バベル―17』や『時の凱歌』と入れ替えてもいい。それくらいヴォネガットは好きである。ところが『タイタンの妖女』は題名が何となく気に入らなくて、実はつい最近まで敬遠していた。ヴォネガット自身が最も好きな作品の一つだと言っているのに……まあ、そういうものだ。いずれにしても不思議な作品である。なにしろ人格破綻者みたいな登場人物ばっかりで、ラスト近くまで誰にも感情移入できないにもかかわらず、読み進むのにほとんど抵抗を感じなかったのだ。そして最後にはそんな人格破綻者たちにも愛着を覚え、いつも通りホロリとさせられてしまう。「心優しきニヒリスト」の面目躍如といったところか。複雑怪奇にあやなすストーリーや、破天荒な太陽系天体の風景描写は、時にグロテスクながら他の作品にはない「華」を感じさせる。やはり代表作の一つにはまちがいあるまい。(『新・SFハンドブック』収録)

 

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